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沼山大根
手渡された歴史のバトン

秋田県横手市の中心部から離れた、山あいの小さな集落「沼山」。
その集落で生産される「沼山大根」は旨味が強く水分が少ないことから、いぶりがっこに最適と言われていましたが、育てやすい新たな品種の登場と高齢化により2004年には生産が途絶えてしまいます。
しかし農業試験場の研究員が「この種を途絶えさせてはいけない」と守り続け、それを引き継いだ三件の若手農家は農薬を使わずに大根を栽培・採種を繰り返し数年。
2018年ついに沼山大根を秋田伝統野菜として復活させることができました。こうして、数百年受け継がれてきた種は絶えることなく繋がったのです。
この種を未来へ繋ぎたい

一粒一粒の種に、これまで繋いできてくださった方たちの想いを感じます。それと同時に継いだ者としてどのように未来へ繋げていくべきなのかという問いが生まれました。
私たちが辿り着いたのは、沼山大根と共に自分たちが住むこの豊かな秋田市河辺の自然形態を維持し、未来へ繋いでいこうというものでした。
自然に負担をかけないために、農薬や肥料を使わない栽培方法を採用していますが、個性的な沼山大根の栽培は、決して容易なものではありません。しかし、少しずつこの土地に種が馴染んできたという実感があります。

沼山大根の魅力

青首が美しい沼山大根は、一般的な大根に比べて水分が少なく、固く身がしまっています。
生食だと辛味が強く、加熱すると甘味が増し、煮るよりも焼いたり揚げたりする方が美味しいという、とても個性的な大根です。
また一般的な大根と比較するとビタミンCが二倍、多くの呈味アミノ酸の含有量が高く、これが濃い味の要因になっているそうです。
味も姿も個性的で、育つスピードもバラバラ。一本一本手入れをし、収穫も手作業。手間は掛かりますが、この味わいは唯一無二。まさに絶やしてはならない種だと思っています。
出典:吉澤結子ほか「秋田県伝統野菜沼山だいこんの栄養成分の調査研究」秋田県立大学ウェブジャーナルA 2022, Vol. 10, 65-69
すみずみまで味わう

沼山大根は固定種の野菜。何世代も種を繋いできました。
私たちが伝統野菜や固定種を選ぶのは、味わいや風味に個性があることと、長い年月をかけ気候風土に馴染み「この土地の野菜」となる魅力があるからです。
そうして育てる大切な野菜だからこそ捨てることなく「すみずみまで味わう」ことを大切にしています。例えば、間引き大根は「切り干し大根」へ、パリポリがっこを袋詰めする際に出る「がっこのはじっこ」はドライ加工に、葉はジェノベーゼ風ソースに加工しています。
一つの大根から、これほどの味や香り、食感のバリエーションが生まれることに私たち自身が大変驚いているほどです。大量生産はしない。そして使い切る。これが私たちの農業です。
私たちにとって沼山大根とは
沼山大根は、単なる大根の一種ではありません。
私たちにとって、この地にとって人と人を繋ぐ一つの重要なアイテムとなっています。
畑では、地域の学生が農業体験の場として国際交流も交え日本の伝統的な大根の栽培を共有し
水場では、大根を洗いながら「はじめまして」の人たちが会話を弾ませている。
燻し小屋では、各々スモークにしたいものを持ち寄って遊びながら夜を明かし
試食会では、その年のパリポリがっこのできを喜び合う。
ここに集う人たちは、老若男女 出身地も国籍も関係なく「沼山大根」を軸に集まる人たち。この河辺に住む人たちもまた、外から体験に来る人たちを歓迎してくれています。そういう優しさと度量の大きさが、まるでここの自然と同じで私たちはいつも安心して身を委ねることができます。

